地に足つけたくて始めたアルバイト
――35歳でBOKURAのアルバイトを始められたそうですが、それまではなにをされていたんですか?
岡田:
いわゆる売れない役者です。
声優や舞台役者、イベントのMCやラジオなど、芸能の世界にいました。
18〜19歳で役者の道に入って、オーディションを受けて仕事をもらってみたいな感じのことをずっとやっていましたね。
基本的には声優事務所にいながら裏で声だけ当てるというより、自分が前に出る仕事が多かったです。
――なぜアルバイトを始めようと思ったんですか?
岡田:
アイドル的な売り方をされてた当時、周りはもっと若い女の子しかいない状態だったんです。
10代後半〜20代前半ぐらいの子がキャピキャピしてるような中だったので年齢のギャップがすごいあって。
年齢的にも地に足つけたくていろんな人に相談する中で、当時の芸能プロデューサーからBOKURAを紹介されました。
――全く経験のない業界へ飛び込むことにハードルは感じましたか?
岡田:
なかったですね。
芸能を辞めたあとは会社員を選ぶ人も多いので、ハードルは感じませんでした
ただ一般的な中途採用とも違うので、
芸能時代の人脈や先輩が働いている会社など、リファラル採用で入る人が多いと思います。
私の場合はアルバイトだったので、もっとハードルは低かったです。
「駄目だったらやめればいっか」ぐらいの感覚だったので、そこまで深く考えてなかったです。
パソコンもろくに使えなかったんですが、
当時お話をいただいていた業務が Active Fan Communication(※1)だったので、
スマートフォン一つで仕事できるなら生活的にもやりやすいな、と思っていました。
※1 Active Fan Communication:
ファンの発信に対して企業から積極的にコミュニケーションを取りにいく施策。
1人1人に寄り添ったコミュニケーションを図ることで、無機質な広告では成しえなかった “個人”に企業やブランドの声を届ける。
お給料の金額の多さに違和感。
――その後2年で正社員になられたそうですが、ギャップや葛藤はありましたか?
岡田:
業務内容自体はアルバイト時代に経験があったのでギャップはなくすんなり入れましたが、
まさに社会人1年目という感じでとにかくビジネスリテラシーがなかったです。
単純にマーケティング知識自体も皆無ですし、
言葉一つとっても“リソース” “タスク” など「日本語でいいでしょ!」と思うことがたくさんありました。
あとは細かいビジネス用語ですね。
「思います」を「存じます」に訂正された時、当時は「ニュアンス違うだけで一緒じゃない?」って思ってました。
今となってはそりゃそうだよ、って感じですけどね。
――少し遅くに新卒の気分を味わう感じで、「異業種だから」「企業にはいったから」といった特別なギャップはなかったんですね。
岡田:
そうですね。
でも、お給料の金額に関してはとても違和感がありました。
新卒入社と同じくらいの金額をいただいたのですが、
10年以上役者兼フリーターの生活だったので、恐れ多くて…。
「そんなにもらえないです、下げてください」と言っていました。
一般企業で働く友人と給与の話をすることもなかったので、
企業で働くときの給与水準や評価のされ方がわかっていなかったんです。
芸能の時は物に寄りますが大体ランクによって1本あたりのギャランティーが決まっていて、
仕事数×ギャランティーで給与をいただいていたんです。
オーディエンスが盛り上がっても、
事務所は「良かったね」「次も頑張れ」だけで給与という意味での評価は上がらないんです。
オーディエンスが喜ぶ仕事をするのは当たり前なので、評価対象ではないんですよ。
でも会社はクライアントからの褒め言葉や社内への貢献度が評価に入って給与が上がっていくので、
自分の中の仕事の成果と提示される給与には常にギャップを感じていました。
――それはどのように解消したんですか?
岡田:
今も完全に解消したわけではないですが、慣れるしかないと思います。
徐々に「そういうもんなんだな」って納得しています。
消費者が喜んでいると、クライアントからも感謝されます。
そうすると会社の人たちがすごく喜んでくれて、
顧客満足度をあげることが案件の継続に繋がり、自分の評価として返ってきて、給与に反映される。
自分がやったことと消費者やクライアントの反応と社内の反応が繋がった時、納得できました。
特に「売上に直結しない成果も評価される」BOKURAの環境だからこそ、慣れやすかったと感じています。
一対一のコミュニケーションを突き詰める。芸能時代からの意識が活きた仕事
――アルバイトから正社員になるきっかけはありましたか。
岡田:
会社自体の契約クライアントが増えてきて、
Active Fan Communication を専任できる人が会社として欲しいというタイミングで
「正社員にならない?」と声をかけていただきました。
――アルバイト時代のどういったところが評価されたと感じていますか?
岡田:
Active Fan Communication の質だと思います。
役者時代にプロデューサーや制作チーム、ファンなど、
様々なジャンルの人間と円滑にコミュニケーションを取る必要があったので、
コミュニケーション力が磨かれていたのかもしれないですね。
今のように企業の求めるキャラクターに合わせることは当時そこまで考えてなくて、
どちらかというとコミュ二ケーション相手が何を望んでいるかだけを考えていました。
一対一のコミュニケーションを突き詰めてやっていたことを評価されたんだと思います。
逆にできないことは壊滅的にできませんでした。
苦手なことに関してはとても時間がかかるし、精度が低い。
でもできないことを隠そうとはしないし、できないことはできないと言うので、
扱いやすくて人事的にも配置しやすかったんだと思います。
苦手分野に関しては、時間をかけてOJTで学ぶ機会をいただいたという感じですね。
必要なことは全てやる。わからないことは素直に聞く。
――正社員になってから5年後には取締役に。
30代で始めたアルバイト出身者から取締役になるのは異例だと思うのですが、なぜそんなことが可能だったんですか。
岡田:
人が気付かない浮いている仕事を拾うことができるからだと思います。
推進力があって引っ張っていくタイプのトップについていきたいと思うんですが、
どうしてもはやいスピード故の取りこぼしが発生すると思うんです。
担当者が決まってないことや中途半端なままのプロジェクトなど、人より気づくタイプなので、
放っておけず拾って指摘したり解決する動きをしてきたからだと思います。
トップに対しては「あなたは突っ走ってください。とにかくみんなの先頭にいてくだい。あとは何とかします」
という意識が強く、私自身は根っからの2番目気質でアシスタント気質なんです。
――気付いたことを形にしたり整えるのに意識していることはありますか。
岡田:
「置かれた場所で咲く」ってよく言うんですけど、
置かれた場所に責任が生じるので、与えられた仕事はクオリティ関係なくとりあえずやりきっています。
その上で、拾ったものが大きすぎたり専門的な知識が必要だったとき、
わかる人を瞬時に判断して助けてもらっています。
社長や他の役員に相談したり、得意なメンバーがいるならその人に聞いたり。
社内には得意分野を持ってる人たちがいるので、その人たちに聞く、そして教えてもらったことをやるだけですね。
「必要なことは全てやる。わからないことは素直に聞く」これは経験やスキルに関係なく意識していることです。
――企業で働いたことはないが経験したい人に向けて、これからどんなことをしたら良いですか。
岡田:
全く就職したことがなくて、企業というものがわからない状態であれば、
ある程度社会の仕組みを調べておいた方が良いですね。
だけど不安になって辞めちゃうぐらいだったら飛び込んじゃえって思います。
やったら何とかなる!
企業で働いた事がない方が、どんなジャンルのお仕事をされているかは分からないですが、
例えば芸能の世界の場合、作品を創るときはチームですけど、成果を出すのは最終的には自分1人なんです。
次の作品のオーディションではライバルだから結局孤独だし、蹴落とされたりもしますしね。
その点会社は、特にBOKURAはなにがあってもチームで動くので、安心して飛び込んだらいいと思います。
「案ずるより産むがやすし」です。